一昨日、監督をしている少年野球チームの子どもたちに話したこと。
「君たちの実力はとても上がってきている。守備は上手くなったし、ボールも遠くに投げられるようになった。足も速くなったし、打球も鋭くなってきた。それだけの努力をよく頑張ってきたと思う。だからこそ、これからはその実力を発揮する力を身に着けていこう」
と。
一昨日の試合、彼らは大敗した。
相手はとても強いチームだったけれど、実力を出し切ることができれば、勝つチャンスは十分にあったと思う。
相手の体格、普段とは違うグラウンド、遠征距離、いろんなものがあって、実力を発揮することが出来なかった。
試合までの雰囲気を作り切れなかった監督としての自戒も込めて、冒頭の言葉である。
選手にそう話しながら、私自身頭を整理するきっかけにもなったなと思う。
実力、というのは自分で上がったことが分かるものが多い。
先の例なら足が速くなった、は100m18秒かかっていた選手が17.7で走れるようになった、とか。ボールを30mしか投げられなかった選手が40m投げられるようになった、というように、選手から見ても私たち指導者から見ても分かりやすい指標である。
一方で、「実力を発揮する力」は伸びているかどうかが判断しづらい。
試合をやってみて、その結果に応じてフィードバックとしてあらわれることもあるが、その結果が「調子が良い」ものなのか「調子が悪い」ものなのかは、他の試合と並べて比較してみないと分からない。
さらにいえば、野球など相手があるスポーツにおいてはそこに相手のパフォーマンスも絡んでくるので非常に複雑で分かりづらいものになってくる。
(※これは蛇足かもしれないが、自分の実力も日々伸びる、という意味では実力自体も変数であるからより分かりづらい)
そんな分かりづらい「実力を発揮する力」だが、ここさえ伸びれば選手のパフォーマンスやモチベーションは一気に伸びるのではないかと思っている。
というのも、「実力を発揮する力」が伸びる、ということは「実力の伸びに対して、結果も伴いやすくなる」つまり平たく言えば「努力が報われやすくなる」ということだからだ。
報われない努力ほどむなしいものはないし、いや多くの場合いずれ報われるのだろうけれど、そこまでがんばれ!とまだ子どもである選手に求め続けるのもなかなか酷な話である。
「実力を発揮する力」が伸びる
→「努力が報われやすくなる」
→「努力をいとわなくなる」
→「実力」が伸びる
→より結果が出やすくなる
みたいなサイクルを作ることが出来れば、今の選手にとって野球というスポーツはもっと楽しんでもらえるだろうし、これを他にも応用できれば、勉強や他のスポーツなど色んなことに主体的に取り組むことが出来るようになるのではないか。
そういう風に考えている。
では、どうすれば「実力を発揮する力」が伸びる、のか。
そこをこれから選手と色んな取り組みをしていこうと思っている。
現時点での仮説の1つは「当たり前のことを当たり前にやる」、というもの。
実力が発揮できていない、と感じる象徴的な出来事は、「いつも出来ていることが出来ない」そういうプレーが起こった時だ。
なんでもないゴロをはじいてしまう、とんでもないボール球を振ってしまう、そういう感じだ。
それが何で起こるんだろうな、と選手の練習を見ていると、数は少ないけれど練習中もたまにそういうプレーをしていることがわかってくる。
そして明らかにそういうときは集中していない、疲れが出ている、など普段とは違うコンディションなのだ。
そこを1つ1つ指摘をして一緒に修正していく、そういう工程を踏んでいこうと思う。
ここでふと思い出すのが学生時代の計算ミスや漢字の細かなミスなんかと同じじゃないかなと。
塾で講師をしていた時代を振り返っても、計算ミスをする子は受験期までそれが続いていき、意外と成績が伸びなかったりすることがあった。
そういう子たちにとってはある意味「計算ミスをすることが当たり前」になってしまう。すると、不思議なことに彼らは「計算ミスをしないように」ではなく「多少の計算ミスは起こるから気にしない」ようになることが多かった。
もちろん、ミスをしないように、だけのモチベーションは負のサイクルにつながる可能性があるので、それ自体を否定することはないのだが、とはいえ「多少の計算ミスは起こるから気にしない」と思っていると「本質的なミス」を見逃してしまったりというのがよくあったように思う。
つまり、「集中していないからミスをした」ときにしっかり指摘をして、
「ミスをしたのはなぜだろう?」
→「集中していなかったからだ」
→「なんで集中力が途切れたんだろう?」
→「どうすれば集中力を戻せるのだろう」
というステップを踏んでいくことで、自分自身でそういう負の状況を打開できるようになってほしいなと思っている。
彼らにそういう風になってもらうためには、まずは教える側の私が自分を律する必要があるし、何よりしっかりとした眼で彼らを見つめる必要があるので、ここからが私にとっても選手にとっても大切だなと思いつつ、一緒に「実力を発揮する力」を伸ばして、良いサイクルを作っていこう、と感じた週末だった。